数年前から、店に入って席に着くと
注文もしていないのに勝手に出て来る
『お通し』について、
いらないから断っても良いのか?
料金は取られているのか?
断る事は出来るのか?
といった疑問が話題に登るようになった。
今回は『お通し』の持つ意味と、
断る事は法律的にはどうなのか?、
値段の相場はいくら位なのか?
などについての解説を、
長年飲食店を経営する筆者の見解を
交えながら解説してみたい。
お通し断るのは自由だが!?意味と法律や値段相場!
結論から先に述べるが、
『お通し』を断る事は可能だ。
『お通し』を断る行為については、
法律的には何の問題も無く、
更に、店の方も心得ているので
『お通し』を断る事について、
逆クレーム的な事も起こらないだろう。
安心して断ると良い。
但し、『お通し』が出る意味を
しっかり理解しておかないと、
大恥をかく可能性もあるので、
注意が必要だ。
また、
『お通し』の意味と値段相場を知れば
その値段相場に対して『お通し』を断る
リスクはどのくらいかが判るはずだ。
お通し断る?値段の相場と法律は・・・
そもそも『お通し』とは席の利用料金、
テーブルチャージの事である。
『お通し』の値段相場は、地域や、
店の格の違いで大きく振れる
場合もあるが、大体は300円~500円
といった所だろう。
もちろん、
端から『お通し』の無い店もあり、
逆に『お通し』が1000円前後の値段
という店も存在する。
『お通し』を断る事は法律的には
何の問題も無いことは前述したが、
『お通し』を提供する店側にも
法律的な問題は存在しない。
ネット検索してみると
「お通しを断る事のできる法律的根拠」
のようなタイトルを幾つか目にするが、
そもそも、そんなに大袈裟な話ではなく
コチラも前述したが、店側も、
『お通し』を断る客がいる事は
想定済みなので、法律を持ち出すとは、
ナンセンス極まりない事なのだ。
難しい法律の話を持ち出して、
たかだか相場300円程度の値段
『お通し』を断るツールにと
考える人も少ないだろう。
しかし中には、頼んでもいないのに
勝手に出される『お通し』を、
店からの押し売り的に感じている
人もいるだろう。
押し売りだから、法律を用いて断る
という連想がなされている様に思える。
飲酒人口の減少が顕著な昨今、
このような人が増えるのも理解できる。
お通し断る?その意味とプロのアドバイス
そもそも『お通し』とは何なのか?
その由来は、
「お客様を席までお通しする」
から来ているようだ。
『お通し』とは
客を席にお通しする料金、つまり、
前述した通り、テーブルチャージを
意味しているのだ。
テーブルチャージとするのは
無粋な為『お通し』と呼んでいる。
また、テーブルチャージを『お通し』
とする事で、小鉢料理をサービスで
提供しているのだ。
よって、『お通し』を断ると、
小鉢料理は提供されないが、
テーブルチャージはやはり料金に
加算されるだろう。
お通し代を、通常の料理や飲み物に
加算すれば、若干料金は高くなり、
注文料理が提供されるまでツマミなしで
飲み物を飲む事になるだろう。
◆お通しが存在する意味
『お通し』の存在には
どんな意味があるのか
まずは紐解いてみたい。
店側が、客が来店した際に最も
気遣うのは、スムーズに席について貰い
とりあえず乾杯をして頂く事だ。
それはもちろん客側のニーズでもある。
大抵は複数人数での来店である為、
もちろん親睦を深めるという意味で
集まるのだろうし、
お一人様の場合であっても同様に、
まずは飲み物を飲みたいはずだ。
席にお通しされて、最初の飲み物が
出て来るまでに手間取っていては、
客が受けるその店の印象は
悪くなるだろう。
更に、飲み物を楽しみながら注文した
料理が提供されるまでの間を程よく
繋いでくれる、小鉢に入った
『お通し』には、そんな意味がある。
それと同時に『お通し』には、
その店の味付けや料理のレベルを
客に知って貰うという意味も
併せ持っている。
そんな意味もあるが故、
料理人は、小さな小鉢に入った
『お通し』にも、全力を注いでいる。
だが例外で、大手店チェーンなどは
アルバイトの人が、簡単調理で提供して
いる為、非常に程度の低い『お通し』
が出される事もしばしばある。
『お通し』が適温でなかったり、
すっかり乾いてしまっていたり、
これは流石に提供される意味がなく
拒否したくもなるだろう。
だが、
安さに重きを置いて選んでいるので、
妥協すべき事でもある。
ちゃんとした店であれば、
『お通し』を断るという発想は起こらない
のではないだろうか?
◆お通し断る?プロのアドバイス
ちゃんとした店では、『お通し』は
店側のプロデュースの一貫であり
粋の世界のものである。
『お通し』を断るという事は、
粋の世界を理解せずに否定する、
無粋な行為という事になるだろう。
大手チェーン店ならば問題はないが
ちゃんとした店で『お通し』を
断るのは、止しておいた方が良い。
店のスタッフが感じる『お通し』を
断る客へのイメージは、「ケチ」
「貧乏」「世間知らず」などが挙がる。
同席している仲間からも同様の
イメージを持たれる危険性もある。
歴史や粋を重んじている店であれば
『お通し』を断る客に対しては、
粋を理解して頂けない、
当店に相応しくない、などの理由で
次回からの来店を断られる場合も
想定出来る。
分相応の店をチョイスして、
愉しめば問題はないのだが。
もしも、アレルギーや好き嫌いなどで
だされた小鉢を断るならば、理由を
ちゃんと伝えれば良い。
粋な店ならば、別のものを
用意してくれるはずだ。
そして、もう一つ理解するべきは、
「客は偉くない」という事だ。
お店を利用するという事は、その店の
コストの一端を担うという事である。
お店には、スタッフによって
清潔に保たれた席やトイレ、
エアコンなどで整った空調、
内装インテリアやBGMなどによる
雰囲気の演出などが用意されており、
そんなコストのかかった環境を
利用させて貰う以上は、
店の料金システムには素直に
従うのが道理であり、それが嫌ならば
コンビニなどで酒とツマミを調達し、
誰かの家や公園かどこかで愉しめば良い
という事になるのだ。
それ故に、
昨今では『家飲み』なるものが
流行しているのだろう。
別に店の大将やスタッフと仲良く
ならなくても、物理的に食べ物や
飲み物が愉しめれば良いという人は、
『お通し』を断る事を考える時間を、
酒やつまみが安い、美味しいという
スーパーやコンビニなどを探す事に
あてた方が良いだろう。
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