おんな城主として大河ドラマで
注目を集めることになった井伊直虎。
井伊家のピンチを乗り切り、立て直す
ことに尽力した井伊直虎の努力は、
彼女の没後に大きく報われます。
井伊直虎が育てた井伊直政は、
徳川家康のもとでは、四天王の一人に
数えられる程に活躍します。
立て直した井伊家は、江戸幕府で長きに
渡って重用されます。
幕末の大老井伊直弼は、開国かどうかで
意見が割れる国内で、幕府の体制維持に
尽力しました。
おんな城主直虎だけでなく、
井伊直政、井伊直弼といった、
江戸時代の初期と末期で大事な役割を
担った井伊家が輩出した家臣についても
少し見ていきましょう。
おんな城主井伊直虎の運命と
江戸時代の始まり
まずは、おんな城主井伊直虎の
運命について、みてみましょう。
波乱の時代を生き抜き、
井伊家の存続のために
おんな城主として人生をかけた
井伊直虎。
彼女がいつ生まれたのかは不明です。
井伊直虎自身については、
『井伊家伝記』に
基づいているものが多く、
確かでない部分も多いとの事。
直虎の生きた時から200年以上後に、
歴史に名を残す働きをする井伊直弼を
輩出した井伊家は、
徳川家に長く仕え、活躍したのは
皆さんご存知の通りです。
しかしながら、江戸時代の始まる直前、
井伊直虎と井伊家は存続の危機に
何度も直面します。
井伊家は、もとは今川氏に
仕えていました。
井伊直虎の父・直盛には男の子供が
いなかったため、従兄弟の直親を婿養子
に入れる予定でした。
ところが、直親の父親らは、
謀反の疑いをかけられ自害させられ、
井伊家は直親を守るために
信濃へ逃がします。
直虎もこの時出家し、「次郎法師」と
名乗ります。
まるで男のようなこの名は、
井伊家と井伊直虎のその後の運命を
表しているかのようです。
さらに井伊直虎を悲劇が襲います。
今川義元に仕えていた父親の井伊直盛が
桶狭間の戦いで亡くなり、
後を継いだ井伊直親は、その2年後に
討たれます。
まだ1歳と幼かった井伊直親の息子は、
直虎が出家したお寺の計らいで別の
寺へ移されます。
この時には井伊家の男は、
一歳の井伊直親の息子、のちの直政
ただ一人。
出家して次郎法師を名乗っていた
直虎は、この時に還俗し、
井伊家の事実上の当主となります。
つまり、おんな城主となったのです。
このとき1565年。
父親・井伊直盛の没後からわずか
5年の事です。
直虎なければ江戸時代はどうなった？
井伊直弼まで輩出した井伊家の立役者
幕末に開国の決断をした大老井伊直弼を
出した井伊家は、
数百年に渡り徳川家に仕えます。
子供のいない井伊直虎には
血のつながる子孫はいないので、
井伊直弼とももちろん血はつながって
いません。
何代にもわたり続いた井伊家は、
おんな城主・直虎が守った
井伊直政の子孫になります。
直虎がおんな城主となってから
10年後、
井伊直虎をはじめとした
生き残った井伊家の人たちは
直政を徳川の家臣にさせることに
します。
直政が徳川家康に仕えることになった
のは、1575年です。
織田信長の名を広く知らしめた
1560年の桶狭間の戦いから、
徳川家康の台頭を決定的にした
1600年関ヶ原の戦いまでの間は、
わずか40年です。
この40年間、日本も激動の時代を
経験していますが、
井伊家はさらなる存続の危機に
さらされ続けました。
井伊直虎は、桶狭間の戦いで父を失い
ました。
父の従兄弟の直親と、その父親は、
今川氏に仕える家臣同士のもめごとが
原因で命を落としています。
井伊家最後の望みである直政を
仕えさせる先に徳川家康を選んだのは
正解でした。
本能寺の変があって織田信長が逝去した
1582年に井伊直虎は亡くなります。
井伊直虎は、直政の武功の多くを
知ることがないまま亡くなりましたが、
彼は徳川家康の元で
重用される家臣となります。
武田氏との戦いだけでなく、
何より関ヶ原の戦いで大いに活躍し、
四天王の一人に数えられる程に
なります。
井伊家の側から見れば、徳川家康は
井伊家を救った大恩人です。
戦や交渉に優れ、忠誠心の強い
井伊家の人間は、家康だけでなく
徳川家にとって重要な存在でした。
その後の数百年の幕府の体制維持に
井伊家の人間が活躍します。
井伊直政の息子直孝は、家康だけでなく
家光の信頼を得て、
徳川家の安定に大きな役目を
果たします。
井伊直弼が下した開国の大決断、
（賛否両論ではありますが）
安政の大獄といった出来事からも
井伊家の人間の思慮深さや
忠誠心を見て取れます。
江戸幕府の長期の安定と文化の発展は、
明治時代以降の大きな日本の変化を
支える礎となっているはずです。
以上のように、
徳川家を長く近くで支え続けた
井伊家を立て直したおんな城主・直虎の
行動力や判断力には
感心するばかりです。
